写真はある日の何気ない空なんだけど、何となく地図のようにも見えて気に入っている一枚。先週から今週のケベックは本当に暑い。今年で3回目の夏だけど、多分今年が一番熱い。マレーシアよりも過ごしにくい感じだ。何しろ、暑さで18人(モントリオールのみ、ケベック全体で33人)死亡というニュースが出ているくらい、今も暑い。
マレーシアに住んでいたから、さぞかし暑さに慣れているだろうと思われるかもしれないが、実は逆。マレーシアは2シーズンあると言われている。「室内」と「室外」だw。エアコンが効いてキンキンに冷えた部屋に慣れた私たちには、猛暑はきつい。
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さて、先日日本からお客さんが来た。こちらに子供の教育のために来ることを検討されている日本人家族だ。
PEQだけではなく、国際留学生としての可能性も視野に入れている。でも、こちらに来て、まずご主人様の印象は「フランス語が本当に強いし、英語で話しててもフランス語訛りがあるなあ。モントリオールを子供たちの教育の場として選んで、本当に大丈夫なんだろうか?」ということだった。
このことについてどう思うか、と聞かれても、実は一言で返すことはできない。なぜかといえば、まず、個人個人の立ち位置から確認しなければならないからだ。例えば…
1.子供の英語を「英語ネイティブレベルにしたい」のかという件。「英語ネイティブ」って言うのは多分、声を聞いていたら英語圏出身にしか聞こえない発音など、という狭義で使われていることが多い気がする。炎上覚悟で言うと、つまりこういう方向性を目指している場合は、無意識のうちにアングロサクソン至上主義的な気持ちを植え付けられている気がしてならない。正直自分も、実はそういう時期が長かったし、日本にいるとそういうバイアスがかかるようにできているので、気持ちはよーくわかるんだけど。
2.日本語の教育をどこまでするつもりなのか。(母語/第一言語は日本語にするのかどうか)
3.それ以外の言語をどうするつもりなのか。
そして、これが多分一番大事なのだか、子供の適正はどうか。多言語環境が得意な子かどうかなどもある。
ということで、我が家の上の3つに対する考え方は以下の通りだ。
1.子供を英語ネイティブにしたいという意思はない。寧ろ、どこの訛りのある英語でも自在に聞き取れる柔軟な耳を持ってほしいと思っている。(国際社会で生きるにはこれが重要だと思うから)ただし、できる限り文法はきちんと正しく、しっかりした文法の運用で、的確な語彙で、信頼されるレベルの文章が書けることが重要。(マレーシアでこれを育てることは大変難しい。間違った英語が多い環境なので、きちんと勉強して直してもらわないと後で大変だ。)
2.日本語を、完璧に読み書きできて、敬語が間違いなく使えるレベルにならなくてもOK。重要なのは話している時に聞き取りやすく、日常会話なら日本人だと思ってもらえる会話力が望ましい。レベルの高い内容の話の場合に語彙力が多少低くても、それは後付けで補えるからよい。書きについては、携帯のローマ字入力機能を使って、簡単なメッセージが日本語で書けるレベルがあれば十分。これらの条件は最初から描いていたわけではなく、子供の成長を見ながら、大体この辺の落としどころかなと、最近定まってきた感じだ。
3.マレーシアで育ったため、それ以外の言語が充実しすぎている。中国人と中国語(マンダリン)で話せて、日本人と日本語で話せて、英語環境で自分の意見を堂々と述べて、エッセイを書ける。これは、環境によって与えられたボーナスみたいなものなので、これにより自信を持ってもよいが、驕らないことと、自分の言語を育ててくれた多くの人への感謝の気持ちを常に持つことを希望。(耳にタコができるほどこのことを言い続けている)
こういうレベルを目指していて、今ほぼこのレベルに達している。フランス語については長女は我が家では一番話せて、流暢さはまだ完ぺきではないけれども発音はめちゃめちゃいい。ついでに、日本語を話すフランス人の真似をしているヤバタンというノルウェイ人のYoutuberがいるのだが、その人の真似が大得意だ(笑)音の再生能力が高いんだと思う。
下の子はフランス語には全く興味がないが(泣)学校の外国語としての簡単なフランス語のクラスには何とかついていけて、こちらもなぜか発音が褒められているらしい。韓国語のテレビ番組が大好きで、見ているうちに何となく韓国語がわかっているらしい。多言語話者は耳が育っているということなのかな?
話がずれたが、うちではこういう目標設定をしているので、うちは、英語がネイティブの環境に住まないと、とか英語がネイティブの先生でないと、という気はさらさらない。マレーシアにいた時は、中華小学校、マレー語の中学、インドからのインド人が多いイギリス式のインター校で英語環境の高校(上の子だけ)という学校変遷をたどった。上の娘の英語は一時期、インド訛りがあったし、今でもあんなに聞き取りが難しいとされる、インド訛りの英語が大得意だ。マレーシア英語も得意。しかし、インドの先生の英語は一般人の英語ネイティブ(文法を教える先生以外の)よりも正確だと思う。英語の基礎は、おそらくこのインター校で作り上げたと思う。長女は、先生に英語や歴史のクラスのエッセイを徹底的に直されて、いつもうまい子のエッセイを研究して自分の英語を磨いていたようだ。(余談だが、イギリス式高等学校教育の一種であるIGCSEの歴史の教育は、ある歴史の一時期を徹底的に掘り下げる手法の勉強法で、本当に受ける価値があると今でも思っている。)
長女は、現在ニューヨーク発のオンラインの英語スクールの講師という仕事をパートタイムでしている。英語ネイティブの企業のテストを受けて、英語を教えられるレベルと認められたということだと思う。ちなみに、この仕事はマレーシアにいる時に始めた。彼女の英語は、カナダに来て急速に北米化している。イントネーションがこちらの人にかなり近くなっているし、表現もどんどん取り入れて、カナダっぽくなっている。インド訛りだった頃が懐かしいほどだ。彼女にとっては、アクセントを変えることはその場のTPOに似合った帽子を取り換えるみたいな簡単なことなんだろう。
現在の大学は英語系だが、集まってくる生徒は多種多様だし、教授陣もカナダ人ばかりではない。ただ、使われている英語のレベルは高いし、早いと聞いた。もちろん、英語が流暢ではない学生も多く混じっているが、移民の国カナダでは、どの州に行ってもこれは当たり前のことになる。
ところで、下の娘だが、マレーシアで生まれ育ち、中華小学校のものすごい訛っていて間違いの多い英語の洗礼を受け、英語の文章がいつまでもシンプルで子供のまんまで、文法のミスがものすごく多かったので、内心心配していた。ただ、英語のレベルがそう高くない中華小学校だったので、「英語と言えばSちゃん」みたいに英語のできる生徒と思われていたみたいだ。そこが本人はちょっと自慢だったようだ(笑)母の心配をよそに、英語が得意なつもりの娘は元々文章を書くのが好きで、小学校の一時期、短いお話しづくりに凝っていた。ブログにお話をアップすることを勧め、文法のミスだけはこっそり手伝っていた。
ところが、カナダに来て1年くらいで、文法のミスがいつの間にか消えていた。私は、一度ついた文法の悪い癖は治すのは大変なものと思っていたので、心から驚いた。今でもかなりシンプルだけれども、きちんとした文章を書けるようになった。そして、語彙力はものすごいレベルアップした。元々マレーシアにいる時から、Youtubeなどでは英語圏のもの、特にアメリカのものに親しんでいたから、文法がちゃんとした英語のトラックも頭の中に隠し持っていたのだろうか?本当のところはよくわからない。でも、何もしないで正しい英語のトラックが頭に入るとは信じがたい。今、二人の共通点として一つだけ思い当たるのが、二人は無類の音楽好きで、お互い違うアーティストにハマっている。そして、好きな曲は突き詰めてフルコーラス歌えるとこまで行っていた。前から思っていたけど、英語の歌詞って英語の文法習得にものすごい役に立っているんじゃないかな。サンプルになる表現が丸々頭の中に入っちゃうから。今は誰でもその気になればGoogle使って歌詞を検索して、すっきりと正しい歌詞を習得できる。私も子供の頃に覚えた歌は大概フルコーラスで歌える。ただ、うちの娘たちの場合はそのレパートリーの数が私よりも膨大なだけだ。
そして、二人の母語(第一言語)だが、中国語になってくれればと思っていたが、結局教育の関係からか、本人たちが今一番強いと感じているのは英語だ。でも下の子は、未だに中国人のクラスメイトたちと常に中国語で話す環境にいるため、マレーシアにいた時よりも中国語は伸びているかもしれない(笑)
さて前置きがものすごく長くなってしまったが、結論としては、「子供は、自分がなりたいようになるので、親があってほしいようにはならない」(笑)これに尽きるのかもしれない。だから、子供をよく見て、一緒に方向性を決めていくのが最良なのではないだろうか。
私にとって、子供たちが、英語ネイティブ環境ではないモントリオールで英語教育を受けることは、自分たちの目標には十分かなっているので、問題はない。それに、この街のサイズやヨーロッパ的な雰囲気が大好きだし、メトロでどこでも行ける環境が本当に気に入っているし、更に夜でも安心して一人で出かけられる安全さが心からありがたいと思っている。その上、最先端のニューヨークにもほど近いし、物価も割安だ。しかも、本人さえその気になればフランス語も習得できるし、その気がなければ英語でもしっかり生活できる(ただし、ここでいう「生活」とは、コメント欄でCGさんに指摘していただいた通り、就職する=自分がサービスする側に回る以外の状況、例えば学生で、とか観光、短期滞在でここでサービスを享受するという意味での「生活」だ。就職については、また別の記事になるくらい、難しいことは、過去記事*に詳しく書いているので参照してほしい)なんて、こんな恵まれた環境は奇跡的くらいに思っている。
更に言えば、ここの人達は、言語の強い弱いは人それぞれでもほとんどの人はバイリンガルだ。バイリンガルやマルチリンガルの気持ちは、そういう人でないとやはり理解できない気がする。2言語以上持っている人は、脳の働き方が違うのだ。だから、ここのバイリンガル溢れる環境は、私たちには馴染みやすい。誰に頼まれたわけでもないのに、いつもモントリオールの肩を持ってしまうよね。やっぱり私は相当モントリオール好きなんだろうな(笑)
*過去に就職事情について触れている記事は以下の通り。ケベック州での就職は、本当に厳しい。
QOL – カナダ移住で生活の質は上がるのか???(職業編)
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カナダ情報&モントリオール情報、フランス語情報、他の方の経験談など折々投稿して、PEQの生の声を伝えていきたく思っています。
が、自分の人生に最良の判断を下せるのは自分しかいません。
状況は常に変わっていきますので、PEQが本当に自分の条件に最適なのかどうか、必ず最新情報を一つ一つ確認して決めていかれることを強くお勧めします。
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こんにちは!
>本人さえその気になればフランス語も習得できるし、その気がなければ英語でもしっかり生活できる
これについては、働かなくてもよいだけの十分な資産やサポートがある人とそうでない人とで天と地ほどの差があると思います。
(最近ここでよく見かける中華移民の多くは年齢に関係なく前者です)
就労が必要な人は、自分の職種がフランス語スキルがなくてもOKなのか、Indeedというサイトなどを使って事前に調べるといいでしょう。
(フランス語が出来なくても長期にわたって十分な収入が得られるのは技術職などに限られていると思います)
特に資格業務では、それぞれの職能団体によるフランス語試験に受からないと仮免状態ですので職能+(英)仏のスキルがほぼ必須になります。
また、他でよくみられる「(日系企業が募集する)日本語ができる方」という求人もほとんどありません。
こちらの日系企業がバイリンガル職員募集と言った場合に望んでいるのは日英スキルではなく英仏スキルのことがほとんどです。
ちなみに、北米のほかの大都市には各分野に日本語OKのスタッフがいますがここではあまり多くを望めないので、長く暮らすためには医療・法律・金融・不動産などどんな分野でも英語または仏語で意思疎通できる必要があると思います。
以上、とても厳しい内容になりましたが、北米の他の都市と比べての感想です。
これから来る方の参考になればと思います。
CGさん、的確なフォローアップ、ありがとうございます。
今まさに、私も仕事の選択肢の少なさに頭を痛めているところなので、本当に切実ですよね。
たまにいいお話があるなと思っても競争率が高すぎて日本人同士で奪い合いになります。とても厳しい戦いです。
また、辛口のご意見、よろしくお願いしますねw いつもありがとう。