写真は、一品食べた後wのすし盛り@かりん。ご飯が赤米なのが意外で面白い。しかも、ウニが入っているなんて思いがけなかったので、一気に幸せ度が増す(笑)。ちなみに食べてしまったのは出し巻き卵…だったと思う。
モントリオールにも、日本語の図書館があることは前に書いたが、その後日本の「アマゾン読み放題」に加入したので、寒い中移動に1時間以上かけて紙の本を借りたり返したりするのも億劫になり、最後に返す方だけ行くつもりが、図書館のボランティアの方に、
「借りていきなさいよ~、一回電話で延長できるから、そうしたら次返すときにはもう春になってるから大丈夫。」と、熱心に借りていくことをお勧めいただいたため、意志弱く、また借りてきた(笑)。夫の車を待たせていたので、あまり中を確かめないでも面白いことが保証されている(と私が思う)作家を選んで借りた。その中の1冊…上下巻なので本当は2冊だがーが標題の「小暮写真館」(2010年の作品)だった。これが、今までとは違う意味で驚きの作品だった…
宮部みゆきは、多才なので、作品も多様で、社会派ミステリー、時代物、ファンタジー、怪奇物となんでもござれで、そのうちのいくつかの作品の中には結構凶悪な「悪」が描かれている。それでも、主人公が大抵真っ当な考え方の持ち主で、そこがバランスとなって読んだ後味が悪いまま終わることはなかった。
今回読んだ「小暮写真館」は、私の知っている宮部みゆきワールド、主人公の真っ当さや会話の軽妙さなどは踏襲していても、上巻の前半、私は違和感を感じっぱなしだった。私の違和感、それは(え、何?何も起こらないじゃん?)とでもいうような感じだ。しかも、主人公やその周りの子たちの設定が高校生なので、ちょっとしたことわざや慣用句みたいなものを言い間違えたり、使い方がずれていたりする場面が出てきて、もちろん作者は間違っていることがわかるように示唆しながら書いてくれているんだけど、じゃ、正しい使い方は?っていうところまではない。もちろん、今は何でも検索できる時代だから、気になればググって確かめればいいけど、本の描写が鮮やかすぎて、間違った意味が頭に定着してしまわないか、気になる。そのぐらい頻繁に、そういう場面が上巻の前半に出てくる。話の始まりって、キャラクターの設定をしていくところだから、そういうやり方で若くてまだ未熟な面も持っているということを出しているんだと思うけど、そして、その言葉のずれが宮部みゆきの織り成す軽妙な会話の一部になっているんだけど…私にとっては、なんか宮部節が効きすぎてる感じがして、その部分だけなじめなかった。
でも、上巻後半から、そういうくだりが一気になくなり、しかも話が面白くなってくる。最初の部分で丹念に作られた登場人物のキャラクター設定。それが見事に動き出し、読んでいる人にとってはもうまるでみんな友達のような親近感が生まれてくる。そこで、察しの悪い私でもようよう気が付き始める。ああ、そっかー、これはみゆきさんの十八番(おはこ)の「推理小説」ではないのね!いわゆる悪党は出てこない。まるで私も知っているあの町でこんな人達が住んでいても、全然おかしくないような、ほぼ日常に近い暮らしの中に、ひっそり隠れている人の悲しみや、個人個人の秘密、悩み、そんなものが丹念に扱われていて、もうそこまで来たら読者は後には引けない状態に入ってしまっている。
みゆきさんの本は、話が終わってしまうのが寂しい。登場人物たちは自分の友達になってしまっているから、その人たちにしょっちゅう会えなくなってしまうのが悲しい、そんな気になる。
話を読み終わってあとがきを読んで、私は心から納得した。みゆきさんは、凶悪な「悪」を描くことに疲れてしまったんだって。ニュース等で世の中の悪意にさらされがちな昨今、またわざわざ架空の悪を創造することによって、自分がすり減っていく…そして、そんな創造された悪意の話がベストセラーとなって世の中に広く伝わる…世の中は悪意に満ちている…そんな事を伝えるために、渾身の思いで話を書くなんて、それでいいんだろうか?そんな風にみゆきさんは感じたんだろうか。そりゃ、読む方にとっても、凶悪な犯罪の話は相当ストレスになるから、その世界を創造する、生み出すための負のエネルギーたるや、相当なものに違いない。
だから、彼女は、「小暮写真館」を書いた。この話の中の登場人物の怒りや悲しみは、普通の人々が日常感じているものに近い。過激な思想や、スリル満点な展開はないけど、面白い。私の中の「あるある」を刺激する。きっとこんなことあるだろうなあ、こんなひといるだろうなあ。久しぶりに、登場人物たちの顔がはっきりと頭に浮かぶような小説だった。
「凶悪」を描く小説が悪いとは決して思わない。心が強くて健全な時なら、連続殺人の話だろうが、読むことができる。むしろ、そのことで、自分の頭の中にある負の感情を全部発散するのに、こういう悪いヤツの話が役に立っていることもある。多分、小説の中身が自分からあまりにも遠いことだから―自分が凶悪犯罪の加害者や被害者になる可能性なんて、果てしなくゼロに近いと確信しているから、完全な「嘘」の世界として、安心してこういう話を読めるんだろう。
でも、今は、毎日ニュースで小説よりも恐ろしい事件について聞いたり、また日々の生活に心をすり減らしたりして、もうこれ以上の負の感情を受け付けられなくなっている状況の人もたくさんいるだろう。
そんなことをぼんやりと感じていた時だったので、みゆきさんが、凶悪な「悪」ではない、もっと身近にあるものを描こうと試みた、ということに即、合点が行った。そして、読み終わってすぐなのに、この子たちのその後がまた読みたいなあっていう気になった。続く…(小説がねw)
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