La vie scolaire (スクールライフ: パリの空の下で)2019
まだ見ていない方へ
Netflixのドラマシリーズ、’The Hook Up Plan’で主演したZita Hanrot扮するSamia Zibra、通称ジーブラ先生の演技は、この映画で強さと弱さを併せ持った素の人間の生き様を見せてくれた。等身大で本当に身近にいそうな、生身の人間が中学校のカウンセラー職についている、そんな人間に現実に出会った気分にさせてくれる。
一方で、彼女が出会う魅力的な子どもたち。中でもLiam Pierron (役名Yanis Bensaadi、ヤニス)は本当はとても賢く、やさしいのに自分の未来を信じきれずにいらだち、大人に逆らって学校でうまく行かない。
パリ郊外の貧困地域で環境に潰されそうになる子どもたちをなんとか救おうとする大人や、救おうとしない大人の姿を描き、私達に問いかけてくる映画。
ネタバレあり。もう観た人用
(ここからもう観た人用、ネタバレ注意な感想です。)
これまでにも社会にレッテルを貼られて、その中で縮こまって生きるしかない人々を描いた映画は多々あったんだけど、そのエンディングはどうするのか、というのは永遠のテーマだと思う。
その映画を悲劇にすることで、観客の強い感情を引き起こし、それによって観客が映画館を出た後の行動を変えさせるような映画もあるだろう。でも、そのためには、現実に起きているような悲しい事件を映画の中で追体験させたり、映画の中で現実よりもっと衝撃的な結末を提示しなければならない。
このLa Vie Scolaireはそういう路線を取らず、とても危うい状況でハラハラさせることはあっても、結末は希望のあるものだった。その代わり、主要な登場人物に、その立場での意見をそれぞれに訴えさせて、観客に問うという手法をとった。
観る人によってはこれでは物足りない、結局この映画では現実社会を変えることはできない、と感じる人もいるかも知れない。でも、私にとってはこの映画の観せ方で十分に感じた。いくら想像上の人物であっても胸ちぎれるような悲しみを見たくない。この状況だったらこの子たちはこんな風になってしまうんじゃないか、と映画の途中で想像しすぎてハラハラするくらいで私には十分だ。
また、貧困エリアに生きる子どもたちの社会問題について訴えると同時に、この映画の脇役たちが繰り広げる、フランス独特?のユーモアでクスっとしたりして、私には本当にちょうどいいなあ、と感じさせる映画だった。