写真はJust for Laughs (いわゆるどっきりカメラ)と同じ名前のスタジオ。きっと、なんかコメディショーをしているのだろうか。場所はSaint-Laurent通り。結構Hipなお店が多く、散策するのも楽しい。
クラスに、中国系で元東芝に勤めていた30代の男性がいる。サッカーで体を鍛えていて、足の筋肉など惚れ惚れするような仕上がりである。(実は筋肉フェチ。)彼は中国にいる美人の奥さんとしょっちゅうWeChat、日本のラインみたいなものでやり取りしている。WeChatだと、通話の代わりに、音声メッセージをインスタントで送りあうことができて、奥さんはそれで彼の様子を確認しないと安心しないらしい。熱くて羨ましいけど、ちょっと自分の奥さんだったら暑苦しいかも、ははは。まあ、幸せならいいけどね(笑)
彼は、わたしと始終つるんでいる若い男の子たち(うーん、なんかワイルドなマダムに聞こえるな…笑)の様に近しい存在ではなかったが、ランチタイムに横に座るとお互いに軽口を叩き、なかなかフレンドリーないい関係のクラスメートだ。
以前にサーバーのテストで地獄の苦しみを味わったことは話したが、実は東芝君もこのテストで大変な思いをした人の一人だ。彼は私とは全然違い、元システムエンジニアで、今も中国系の会社に乞われてそこのIT関係の設定のお手伝いなどをしている、「お金になるスキル」を既に持っている経験者だ。そんな彼なのに、このサーバー試験で使用したVirtual Boxという仮想PC作成マシンの安定性が悪いために、構築したネットワークの中で2番目に重要な仮想ルーターが、何度入れ直しても機能しないという問題を抱えた。
講師に、
東芝クン「先生、何度入れてもセカンドルーターが機能しません。この先続けられません。」
と訴えるも、
E講師「今は試験中だから、クラスの時の様に私が問題解決するわけにはいかないんだ。まだ時間があるから、できるだけのことをやってみてくれ。」
としか言わない。
東芝クンはもう3日ほどこのルーター一つのために時間を無駄にして、そこから先の構築が全くできない状態。でも、講師は前の席で自分のPCに向かうだけで、彼の気持ちなど気にする様子もない。
ランチタイム中に、彼は、
東芝クン「あんな意味のないバカ試験、やるだけ時間の無駄だよ。だって、Virtual Boxの気まぐれでルーターが作動していないんだから。」
と吐き捨てるように私たちクラスメートに言った。
気の毒…でも、男の人って、あきらめ早いのかなあ(笑)それに、かわいくお願いしてみるとかっていう小技が使えないから、損している気がする…
翌日、いつもクラス時間より早く学校についている私は、まだ生徒が3人しかいない教室で、E講師に近づき、静かに話しかけた。
私「ねえ、E、東芝クンみたいなケースを、あなたはどうやって評価するのかしら?彼はもう3日間、ルーター2が機能しない問題にかかりっきりだけど、あれって本人のミスじゃなくて、バーチャルボックスが悪さしている可能性もあるわけでしょ?」
E講師「でも、彼はルーターが動かないって言っただけで、他に何の説明もないじゃないか。例えばどんなエラーが出たとか、これまでにどんな処置をしたとか、何の説明をするわけでもないし。あれじゃ、何のアドバイスもできないよ。」
私「じゃ、彼はどんな問題が出て、それについて何をして、どんなエラーが出たかってことをあなたに説明した方がいいってことなのね?」
E講師「そう。それにこれは試験なんだから、俺が彼のマシンに行って、問題解決するわけにはいかんだろう。」
私「そう、じゃ、それは彼に伝えますね。うーん…でも、あんな状況にもし私が置かれたら、もう昨日の時点で私はクラスで泣いてると思うんだけどね。彼は強いわね。」
ほどなく東芝クンが来たので、彼にE講師が言ったことを伝え、問題を簡単なレポートにして報告しなよ、とアドバイスした。
テストが開始すると、きっと心で泣いてる東芝クンを想像したのだろうか、E講師が、
E講師「T、君の問題は今どんな状態になってるの?」と東芝クンの方にやってきた。そして、ちょっと歩み寄り、アドバイスをし始めた。やっぱり、こういうやり方の方が、講師と生徒の信頼関係も構築されて、絶対いい!さすがE講師、察しがいいなあ。
東芝クンは、このことがあってから、多分私により心を開いてくれたのか、バイト先の中国の会社でのあれこれを話してくれたり、先日は子育て相談まで受けた(笑)
東芝クン「こどもが、噓をついたんだけど、どう叱っていいのか迷っているんだ。僕は嘘をついてはいけないと教えたくはない。人生には嘘をつけないと困る場面もあるんだし、ただの馬鹿正直ではいられないこともあるだろう?だから、どうしようかと迷っているんだ。君はどう思う?」
私「え?どんな嘘だったの?」
東芝クン「ゲームは1日一回ってルールを決めているのに、妻が帰宅したときに、息子が『今日はまだゲームしてない』って言ったんだって。でも、おばあちゃんがゲームするの見たんだよね。」
私「そう。子供は自分の立場をよくするための嘘って、つくよね。私は、そんな時はね、嘘をつくなとは言わなかったの。ただ、嘘を一つついたとき、それがどんな影響を及ぼすかを子供に説明したわね。例えば、一つ嘘をついたことがわかってしまうと、もし次に何か起きたとき、私はあなたがまた嘘をついてるんじゃないかと疑うことになる。その信頼を取り戻すのは、ものすごい時間がかかって大変なんだよって。これは一回教えて終わることじゃなく、何かある度に何度も何度も繰り返して教えて、やっと定着するものなんだよね…後は、自分も子供に対して言ったことに責任を持ち、嘘がないようにすることも大事だね。」
東芝クン「そうか、嘘をついてはいけないっていうことにフォーカスするのではなくて、嘘をついた場合その後にどんな結果が待っているかということを教えればいいんだね。いいこと聞いた!ありがとう。」
彼と話をしていて、私も子育てと格闘して、色々考えて生きてきたんだなあ、と今更思い出し、なんだか懐かしくなった。今だって子育ての格闘、葛藤は続いているけどね…大きくなったらそれなりに問題も進化して、また親も学ぶ、の繰り返しなんだよね、これからも。
>嘘をついてはいけないって、究極的には嘘ですから。
た、確かに。。。納得のあまり声を出して笑わせていただきました。
ははは。CGさんの暮らしの一コマを明るくできたと思うと愉快です。
いつもながら深いですね。
私だったら「お母さんに嘘をつくなんて許しません」とか言って終わらせそうです。
深いでしょうかね…これが正しいと思ったわけではなく、ただ東芝クンは嘘をつくなと教えない方法を聞いてきたので、私のやり方が合致してるなと思っただけなんですけどね。
私は「うそつきは泥棒の始まり」って母からずっと言われて、嘘をつくと顔に出たり、体が震えてきちゃうくらいバカ正直な子供でした。(笑)母もものすごい正直な人でした。でも自分が大人になって、嘘も人並みにつけるようになって、世の中には必要な嘘もあるとわかってきますよね。それで自分の子供に向った時、(さて、正直に生きろと教える方がいいのか、それとも違う言い方があるのかなあ、)とかなり迷ったんですよね。だって嘘をついてはいけないって、究極的には嘘ですから。(笑)正直者にはそれはきついわけです。なんか非常に細かいとこにこだわってるようですけど。それで、私は本当に考えた挙句、嘘をつくなと言わなかったんですよね。その結果どうなったか、というと、上の娘は正直すぎてたまに人を傷つけることもあるくらいまっすぐな人になり、下の子は不必要な嘘はつかないけれども人を傷つけないための嘘は多少使うような人に育ちました。結局、受け止め方も個性により違うってことでしょうかね。