写真は、先日週末に現れた人形劇パフォーマンスの皆さん。モントリオールには人形劇のグループが多い気がするのは気のせいだろうか?イベントというとよく、こんな感じの街角パフォーマンスを見かける。それが結構…
芸術性が高くてうっとりしてしまう。
昔(といっても2年前w)住んでいたBeaubienにも、すごい気合の入った人形劇場(芸術性が高いのに子供向きってすごいと思う、ちなみにThéâtre de L’Illusionという)があり、いつかお友達の子供を借りて一緒に見に行きたいなと密かに思い続けている。
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親知らずが、急に痛くなり始めた。左下の奥の親知らずで、前々から、体調がよくない時などに何となく痛むことがあった。でも普段は何ともないし、痛くなってもせいぜい2週間程度なので、さほど気にも留めていなかった。ただ、心のどこかで、(ほっといたらいつか爆弾落ちるよな)とは思っていた。そうしたら、よりによって、転職して、これから全力で新しい仕事を覚えていかなきゃ、という時に、歯がうずき始めた。
最初は普段と同じように、弱い痛みで、忙しい時は気が付かないほどだったが、なぜか今回はちょっと違う感じがしてきた。いつもより痛みが強い。歯磨きやうがいを丁寧にしても何の効き目もない。
職場では私ともう一人最近入社した人がチームにいるので、歓迎会をする予定になっていた。歓迎会を木曜日に控えた週明け、やはり痛いので、モントリオールの日本人にはよく知られた、日本人の先生のいるクリニックに予約をしようとするも、定期健診なら1カ月半くらい先、痛みがある場合だと一番早くて来週の火曜日だという。
(一週間待ちか…しかも木曜日は歓迎会なのに、痛くて何も食べられないのもツライなあ…)
… と、そんな中、日本人の先輩の中に一人だけ、別の歯医者に行っているという方がいて、そちらの連絡先をもらった。すると、そこは、水曜日に空きがあるという。歓迎会の前日に行って却って何も食べられなくなっては目も当てられないとは思ったが、もう痛み止めも効かないレベルに痛くなってきた。(ちなみに、痛み止めは薬局で手に入るAdvil。Tylenolと両方試してみたが、歯にはAdvilの方が効くようだ。
そのもう一方の歯医者は、ベトナム人の先生がいるそうで、私にすればアジア系の先生って何となく親しみやすい。この国でアジアからの移民が(ライセンス整えて)開業することの大変さも察しが付くから、アジア人がやっているってだけで、きっと優秀だろうって気がしてしまう。
間に合わなかったら歓迎会はただお話しに行く会になってしまってもいいと覚悟を決め、ベトナム人の先生のクリニックに行ってみることにした。
そこは、Rosemont駅近くの歯医者で、とても交通の便がいい。大変残念なことに、普段先輩がかかっている先生はホリデーに行っておられて、代理の先生にかかることに、ベトナム人かはわからないが、アジア系の女性の歯科医さんだった。
先生は、まず、
C先生「フランス語で大丈夫?
PEQ「できたら英語でお願いします。」
C先生「あー、そうなの。でも英語でも大丈夫よ。あらー、ひどい虫歯になっちゃってますね…」
PEQ「あー、やっぱりそうですか」
C先生「もうあなたの親知らず、壊れちゃってますよ。」
歯で「壊れる」というのは具体的にどんな意味?とは思ったが、そこはお互い第2言語のため、想像力で意味を補う。
C先生「もうこの歯は取っておいても役に立たないし、抜くしかないですね。今炎症起こしてるから、抗生物質飲んで、炎症が治まる10日後くらいに抜きましょう。」
PEQ「はい。」
C先生「抜く前に、周りの歯を綺麗にしておかないと、後でまた炎症起こしてもいけないから、2回クリーニングの予約を入れてね。あなたのは、2回入れないときれいにならないと思うわ。」
PEQ「はい…(10日間以内に2回って、結構頻繁に来ないといけないな…)」
C先生「親知らずですけど、何しろもう壊れてるから、まずは普通に抜いてみますが、もしそれで上手くいかなかったら手術になりますよ。」
PEQ「そうですか。」
この辺の、まず抗生物質(ペニシリンだった)で消炎、抜くときに根っこが残ってしまったら切開して残りを取り出すなどの手順は先にネットで調べていたのと合致していたので、余り説明されなくても納得できた。でも、手術にはどんな場合になるのか、可能性は高いのかなどの説明はなし。
帰宅してから振り返ってみると、いくつか先生に対して、いまいち信頼していいものか疑問な部分が残った。
1.まず、最初に親知らず付近の局所レントゲン写真を撮ってもらったアシスタントの方の指示があいまいだったため、撮影箇所がずれて、親知らずが半分しか写っていなかった。それでも、プロにはわかるのかもしれないが、先生はこれで大丈夫といったのに、
C先生「今日は簡単な診察しかできないけど、次回来た時にクリーニングの後、もう一回レントゲンを撮ります」という。クリーニングしないと見えないこともあるのかもとは思ったが、最初から問題の歯全体が見えている写真が撮れていたら必要なかったのでは?という気がちょっとした(=失敗したことを正直に伝えてくれていないのでは、と感じた)。
2.診察が終わった後、先生自らカードをくれた。そのカードの説明も先生がしてくれたのだが、
C先生「もし、誰かお知り合いを紹介してくれたら、次の時に診療費から50ドルを割引します。その時はその人にこのカードを持ってきてもらってね」という。(腕がよかったら、割引必要ないのでは?とかえって不安に)
3.全体的に、英語のためか説明が簡素過ぎて、とっても不安。(笑)
そんなことが重なり、どうしようか迷ったのだが、抗生剤のおかげでとりあえずの痛みは弱まったので、翌週の火曜日に、もう一方のクリニックでセカンドオピニオンをもらって、納得のいく方で歯を抜こう、と決めた。周りの人から、親知らずを抜く話は結構聞くし、そこまで大きな問題になった話はあまり聞かないので、気にしすぎかな、とも思ったが、何しろ私の歯は「すでに壊れてる」らしいから、すんなりと抜けてくれずに切開などになったら、処置の上手い下手が決め手になり、一生後悔する結果にならないとも限らない。
それで、翌週、もう一方の日本人ご用達のクリニックを訪ねる。
一応断っておくと、私は日本人の歯医者さんだから信用するっていう風にはならない。なぜかというと、他の国で、日本人だということで、簡単に日本人の患者を集めていたが、腕があまりよくないっていわれていたケースも知っているからだ。でも、モントリオールのこのクリニックは、行った人の評判がとてもいいようだ。(この前みたいに不安いっぱいになる感じじゃないといいのに…)
また、こんなことが役に立つのかどうか、ここで打ち明けたら笑われそうだが…(でもいっちゃうけどね)寝る前に、歯を抜くシーンを何度も想像してみる。これはイメトレみたいなものなんだろうけど、怖いことを想像してなおさら怖くなっているのではなく、抜くときに、何の問題も起きず、歯がほぼ自然な形でするっと抜ける感じを想像する。その親知らず君にも(頼むよ~、簡単に抜けてね、今までありがとう!)と頬をなでながら話しかける(笑わないでね)。
そして火曜日がやってきた。会社の昼休みを少し長くもらって(フレックス制に感謝!)クリニックに行き、待合室で順番を待っていた。そうしたら、私の前の患者さんが出てきて、
Rさん「あれ?PEQさん…?」
なんとビックリなことに私の前に診療室にいたのは、知り合いでいつも明るくはきはきと親切な、とっても優しいRさんという女性だった。
彼女は、涙ぐんでいたけど、
Rさん「違うんですよ~、痛いからじゃなくて、始まる前に心配しすぎて涙が出ちゃったけど、始まったらあっという間で、先生15分で抜いてくれたの!全然大丈夫だったの!しかも、本当は今日見てもらうだけで抜くはずじゃなかったのに、先生が今日抜けるっていうから、やってもらっちゃいました~。」
と、涙目と、手に握っていたお守り(かわいいw)とは裏腹に、何とも明るいニュースを、まだしびれて上手く話せないのにRさんは一生懸命伝えてくれた。
彼女の、普段からのポジティブな空気と、あまりにもシンプルに終わったらしい施術のことを聞いて、私は(こりゃ私も今日行けるかも)と直感で思った。こういうのって、上手くいく予兆のような気がするのよね。
そして、診療室に入った。Rさんから聞いていた通り、今日は日本人の先生ではなく、アジア系の女性の先生だった。とても静かに優しく話す人で、声だけで虫歯が治りそうな勢いだ(笑)。
E先生「他のクリニックにもうかかっているなら、そちらからレントゲン写真を取り寄せできますよ。クリニックの名前わかりますか?」
そして受付に指示して、前のクリニックからレントゲンを取り寄せてくれたが、残念ながらEメール添付のレントゲン写真は鮮明ではなかったため、もう一度撮り直しになった。
E先生「この親知らずは、虫歯になっていて穴が開いてしまっているけど、この写真で見る限りは、難しいことにはならなさそうだから、Y先生(日本人の先生)の空きを待たなくても、私が抜くことができますよ。どうしたいですか?」
E先生「ちょっと虫歯の穴が大きいので、少し時間をかけてゆっくり抜いていきます。あなたのお友達のように15分では抜けないかもしれないわね。で、もしそれでうまく抜けてこなくて、根が残ってしまうようだったら、骨を少し削る可能性もあります。上手く抜けることを祈ってますけど。骨を削るのはよくあることなので、全然心配することはありませんよ。」
この先生の話し方は、静かだけど自信に満ちているし、しかも自分のできることとできないことをはっきりいってくれたので、一発で信じると決めてしまった。
結局、その日に抜いてもらうことに即決した。麻酔をかけて、施術が始まると、もう痛みを感じない親知らずの周りを先生がグルグルと円を描くように何かを動かしているのを感じた。何となくレンチみたいなものを使っているのかなという気がしたが、それにしても、動きが激しくも強くもなく、ネットで読んで震え上がっていたような、「ミシミシと歯が肉からはがされる感覚、まるで『進撃の巨人』で生爪はがされるシーンみたいな」とか、「やっぱり親知らず抜くのは力技」みたいな表現は全然似合わない作業だったように感じられた。それは、少しずつ少しずつ、親知らずの周りの歯茎に「抜きますから緩めてね~」ってお知らせしているような、穏やかな作業だった。25分くらい経過して、ちょっと力が入ってきたかな、と思った時に、
E先生「大丈夫でしたか?思ったよりずっと根っこが短くて、案外すんなりいきました。はい、これが歯ですよ。ほら、ここが虫歯になってるでしょう?」
PEQ「はで?ぼうおばっだんでふが?(=あれ?もう終わったんですかw)」
イメトレとほぼ変わらぬシンプルさで、私の親知らずの旅は終了した(笑)親知らず君、聞き分けよくしてくれてほんとにありがとう!
その後、前の歯医者さんからもらっていた抗生物質を続けたおかげか、結局私の親知らずはたいして腫れもせず、頬に青タンもできず(ネットに書いてあったんだけどね)、しかも痛み止めもなしで過ごすことができた。
先生の腕の良しあしって、最終的にはその先生にしかかかっていないから、比較しようはないけど、でも、患者を信頼させて、心からリラックスした状態で処置に進ませる、そういう総合力でいうと、このE先生は、抜群なんじゃないかな?というのが、今回の感想。
E先生、今後もよろしくお願いしますね!