PEQ Montreal
モントリオールで親子留学・海外就職・永住全部目指すブログ
ひとりごと的つぶやき

近づかないと見えない、日常

1カ月間、マレーシア+日本への一時帰国の旅をした。

今回の旅は、夫抜きで娘2人との3人旅。夫は、モントリオールに来た時期が私たちよりも1年ほど遅れているため、自分を後回しにしてまず私に親孝行をしてくるようにと配慮してくれた結果だ。日本には父がいる。父に私や娘たちの元気な姿を見せてあげることが、今回の帰国でしたかったことの中で一番大事なことだった。

実家には、10日間ほどの滞在になった。実家と言っても、今は妹一家がそこに新居を立てて父と同居している。この妹家族がここに父と一緒にいてくれるから、私は海外で安心して暮らしている。父はこの8月で八十歳になった。父の誕生祝いで、父の好きなハンバーグステーキのレストランに家族で出かけ、みんなでお祝いをした。

八十歳になって、もうそんなに量が食べられないからと聞き、小さい方のサイズのハンバーグを父のために頼んだ。そういう小さなこと一つ一つが、歳が上がるごとに変化していく。ハンバーグが食べきれなくなったり、硬い料理が食べにくくなったり、徒歩であまり遠くまで散歩に行けなくなったり…少しずつ自分のできることが狭まっていくというのは、どんなに心細く、不甲斐ない気持ちになることだろう。五十歳を過ぎてまだまだ遠いようでありながら、自分にだって「できないこと」は少しづつ忍び寄ってくる、そのことから父の気持ちを少しだけ理解してあげられることもある。でもきっと、できないことの数とその増えていくスピードについては、私の年代よりも父の年代の方がより切実に感じる事だろう。

一番大きかったのは、父が自分で決めた、運転免許証の返上だろう。反射神経が大分鈍ってきたからと、去年の誕生日には運転することを自らあきらめたそうだ。ニュースなどで、お年寄りが交通事故の際に反射が鈍かったために事故につながるということを見聞きして、自分も覚悟しようと決めたのだろう。そのことによって、行動の自由度はかなり減ってしまったと思うのだが、私の父は誰に言われたわけでもないのに、自分でその決断をした。

父は、退職してから毎日、朝晩2回の散歩を日課としていたが、今ではそんなに長く歩き続けることができないため、自転車で公園に出かけて、そこで運動をしているという。20年くらい前に腕が上がらなくなっていたのに、自分で毎日公園の遊具にぶら下がって肩の可動域を広げていき、今では真上に腕が上がる。朝起きるとまず自転車でお出かけし、帰宅して朝ご飯を食べてから新聞を読み、自室でテレビを見たり雑誌を眺めたりして過ごし、お昼になると妹の作ったサンドイッチのお弁当を半分だけ食べ、また3時ごろに残りを食べて、夕方にもう一度散歩に行き、皆と夕飯を食べて、夜は8時半ごろには寝てしまう。私たちが滞在しているからと言って、その日程は崩れることなく、毎日の日課を淡々とこなしていた。

今は仕事をしていないけれど、父が草刈り道具を積んで自転車に乗っているのを見かけた足の不自由なお年寄りが、自分の敷地の草刈りも頼めないか、と申し入れたそうで、月に1週間ほどは、その草刈りのアルバイトをしているそうだ。

父は、受け取っている年金も本当にお小遣い程度だけを使い、つつましく暮らしている。若い時から、贅沢をしたことはない。が、今回、私たちが帰っていた間は、ずいぶん暑くなったからだろう、ほぼ毎日、家族全員にアイスクリームや甘酒(熱中症に聞くらしい)を買ってきてくれた。あまり上手なことが言えない父の、心からのおもてなしなんだろうな、と思うと胸に沁みた。

そして滅多に会えない孫たちである私の二人の娘には、そのようなつつましい暮らしをしている人にとっては高額なお年玉を持たせてくれた。娘達に伝えた。

PEQ「自分のものには贅沢をしないで、毎日ほんの少ししかお金を使わないで暮らしているじいじがくれたそのお金の価値は、とても大きなものだということを忘れないで、大事に使ってね。」
娘たちが、いつもと違う静かな声でわかってるよ、と答える。そうだよね。多分二人とも、この数日間、父と過ごして色々と感じていたに違いない。二人は、じいじに会ったらあれもしたい、これもしたいと言っていたが、実際にはそこまでいろいろなことを一緒にすることはできず、ただただ父の日常を見守る形となった。父には父の日々があり、スケジュールがある。特別なことを一緒にする代わり、普段の父の生活に寄り添うような時間を過ごしたからこそ、娘たちは本当にこのお年玉を大切にしてくれると信じている。

写真は、モントリオールに戻って間もなく出かけて行ったブルーベリー畑。去年に続いて今年も、ここでおいしいブルーベリーを手摘みで収穫。モントリオールから小一時間で行ける。ブルーベリー狩りは、この時期の我が家の恒例行事となっている。

ABOUT ME
ちえ子
カナダ在住。モントリオールで日本語教師とゲーム業界での仕事の二足のわらじで活動中。高校生、大学生との親子留学→PEQ(ケベック経験プログラム)で永住権取得。TOEIC 960点、実用英語検定1級、フランス語公式テストTEFAQB2合格。過去にクアラルンプール(マレーシア)で通訳、ロンドン(英国)で商社勤務経験あり。趣味はジャズヴォーカル、City Pop(1970-1980年代日本のニューミュージック)、コメディ映画鑑賞。イチ推し芸人はオードリー若林さん。
手数料無料の留学手続きサービスなら【カナダジャーナル】